5年・10年で差がつく劣化対策
自動車は10年以上の使用を想定して製造された工業製品であり、雨ざらしにしたからといって即座に色褪せたり壊れるようなモノではありません。
しかし、5年〜10年スパンでみるとその保管方法の違いで車両の状態に大きな差が生じることもまた事実です。
15〜20年落ちの中古車を見比べるとわかりやすいですが、天井やボンネットの色褪せや窓枠等のゴムがヒビ割れしている個体がある一方で、同じ車種・年式・走行距離にも関わらずボディーの艶を保ちゴム類もしっかりと弾力がある個体を見つけることもできます。
自動車といえど、部品単位で見れば鉄・ゴム・プラスチックの塊に過ぎません。10年スパンの長い時間において如何にこれらの劣化を防ぐ(遅らせる)かがポイントになるのです。
ただ劣化の原因は多々あり、防げるモノもあれば時の流れには抗えないモノもあります。仮に湿度管理したガレージで保管したとしても完全に劣化を回避することはできません。神経質になりすぎず、あくまでも“遅らせる”という認識で現実的にできる対策をしていけばよいのです。
1年のうち、97%は駐車している
ソニー損保による「全国カーライフ実態調査(2020年)」によれば、年間走行距離の平均は6,017kmでした。
少々雑な想定ですが、信号待ちから高速道路までをひっくるめた平均時速を30km/hと仮定すると年間走行時間=200時間となります。1日あたりに均すと33分なので、当たらずと雖も遠からずな数字でしょう。
1年間=8,760時間なので、運転している時間はたった2.3%…
対して駐車している時間は97.7%で、ほとんどの時間は駐車場に置いてあるというのが実情です。
年間20,000kmペースで走る僕ですら、92%は駐車時間という結果になります。この事実から、如何に駐車中の劣化対策が重要かをご理解いただけるかと思います。
湿気と紫外線は大敵
自動車にとって、湿気(水分)と紫外線(太陽光)は大敵です。
湿気の多い環境に放置すれば鉄は錆るし、濡れては乾いてを繰り返せば塗装面の劣化やゴム類のヒビ割れを促進してしまいます。紫外線も塗装・ゴム・プラスチックへの攻撃性が強く、割れや色褪せの原因になります。
紫外線は目に見えないため意識しづらく、内外装の色褪せは徐々に変化していくため、頻繁に乗っていると劣化にすら気が付かないということもあります。
お肌ケアと同じで紫外線対策を怠ったからといって1-2ヶ月で影響が出来るモノではありませんが、5年・10年後を見据えれば必要な対策なのです。
劣化防止に効くアイテム・対策
では一体何をすれば劣化を防止することができるのか?
特別な知識がなくとも、ひと手間または多少のコスト増で対策できる劣化防止策・アイテムを紹介します。
① サンシェード
費用 | 1,000円前後 |
効果 | ◎ |
手間 | ◎ |
まずはド定番ですが、フロントガラスに立てかけるサンシェードです。
安くて手軽なうえ、これが有るだけでダッシュボードやシートの紫外線被爆量は相当抑えられます。
10年落ち程度の車両でも「シートや内装が色褪せてしまった」という例は少なくありませんし、15年を過ぎた頃には「ダッシュボードが割れてきてしまった」という話も聞きます。
慣れれば10秒程度で設置できますので、季節を問わず“駐車したらサンシェード”の習慣をつけておくことをお薦めします。
② 紫外線カットフィルム
費用 | 20,000円〜100,000円 (施工依頼した場合/施工枚数により変動) |
効果 | ◯ |
手間 | – |
フロントガラスは①のサンシェードで防げますが、サイド・リアガラスはウィンドウフィルムがお薦めです。
サイド・リアガラス用のサンシェードもあるにはあるんですが、流石に毎度設置するのは面倒ですし、吸盤で貼り付けるだけなので剥がれてしまうことも多々…
そこで紫外線をカットするウィンドウフィルムを貼ることで内装やシートの劣化を防ぎます。
内装の劣化防止を目的とした場合、重要なのはスモークの濃さを示した可視光線透過率ではなく、紫外線透過率です。(ちなみにフロント3面は可視光線透過率70%以上でないと車検に通りません。)
世の中には“とりあえず色が変わる”というレベルの粗悪なフィルムも出回っていますので、しっかりと紫外線カット能力を確認しましょう。
フィルムは無数に存在するので予算や好みで選択すればいいのですが、僕が知る中ではエルエフティー株式会社のLFTというフィルムは「UVカット率100%」を謳っています。
「紫外線カット率99%以上」という表記はよく見かけますが、完全に紫外線を遮断できるフィルムは希少ではないでしょうか。
サンシェードに比べるとハイコストな対策ですが、施工後5〜10年の耐久性がありますし、最近は純正状態でリア3面がUVカット&プライバシーガラスになっている車種が多いので、実質運転席・助手席のサイドガラスのみの施工で済むケースもあります。
③ ハンドルカバー
費用 | 約1,000円(材料費のみ) |
効果 | ◯ |
手間 | ◎ |
サンシェードとセットで装着しておきたいのがハンドルカバーです。
内装品の中ではダッシュボードの次に直射日光を受けやすい位置にあるため、紫外線の影響をモロに受けます。
しかも常に触り、目に入る部分なのでオーナーは敏感に劣化を察知するでしょう。
最近はハンドル周りにスイッチ等のプラスチックパーツが多様されているため、長い年月紫外線に晒されれば白っぽく色褪せたり、ネチャネチャに溶けたりしてきます。また、ハンドルカバーを装着しておくことで、ハンドル本体はもちろんのことメーター周りも影になるため一石二鳥です。
最適な製品が少ない
紹介しておきながら恐縮ですが、サンシェードに比べると日除けを目的とした“ハンドルカバー”という製品は少なく、僕も愛車にピッタリ合う商品を見つけることができませんでした…
そこでハンドル経に合わせて遮光カーテン生地を裁断し、輪郭にバイアステープを縫い付け、ゴムを通してカバーを自作しました。実測して制作しただけあり、ピタリとハマる装着感はなかなか良いです。
材料費(遮光生地/バイアステープ/糸/ゴム)は約1,000円なので、ミシンと裁縫技術がある方は自作してみてはいかがでしょうか。
④ ボディーカバー
費用 | 20,000円〜50,000円程度 |
効果 | ◯ |
手間 | △ |
屋外駐車(カーポートなどを含み太陽光に当たる環境)する場合は手間は掛かりますが、ボディーカバーを掛けるのがベターです。塗装・ゴム類を紫外線から守り、車内へも一切光が入らないためやはり劣化防止には大きな効果を発揮します。
ただし、保管環境により注意しなければならないこともあります。
代表的なのは“砂の混入”で、カバーとボディーの隙間に砂が入り込むと風でバタバタ…となびくたびに擦れ合いボディやガラスを痛めつけます…
砂利駐車場はもちろんですが、そうでなくとも付け外しをしている間にカバー側に砂が付着してしまい知らず識らずに小キズを増やしてしまっていることもあります。
外したカバーはケースや袋に入れて保管する
ボディーカバーは定期的に洗浄する
風でバタつかないようバンド等で止めておく
ボディーカバーを使用するなら、このようなちょっとした気遣いが必要なのでご注意を!
また、雨も凌げるから安心だ!と思うかもしれませんが、カバー内は換気が悪くやたら湿気がこもります…
錆・カビを誘発させる可能性もあるので、こまめにカバーを外して走行するのが理想です。
⑤ 屋内・屋根付き駐車場
費用 | +5,000円/月程度 |
効果 | ◎ |
手間 | – |
車庫・ガレージをお持ちの方以外なら、屋内駐車場を借りるというのが最も劣化防止に役立つ手段と考えます。
雨風・直射日光を防げ、適度に換気されていて、カバー脱着による傷を気にする必要もないので正直これ以上の環境はないでしょう。
23区内の屋内駐車場賃料を見ると、同立地の青空駐車比で+5,000円程度で設定されているケースが多いようです。
12ヶ月で+60,000円の出費なので全く安い費用ではありませんが、これからも5年・10年と乗り続けたい。いつまでも今の輝きを失いたくない…という方には屋内駐車場を強くお薦めします。
少なくとも10万円近い高級コーティングを掛けて青空駐車するくらいなら、何も施工せずに屋内保管したほうが圧倒的に劣化防止に寄与できます。
屋外駐車の場合、どんなに高いコーティングを掛けてもその効果は1年と持ちません。毎年コーティングにコストを掛け、雨が降るたびに洗車をするくらいなら屋内駐車場を探したほうが遥かに愛車のためだと言えます。
都心エリアなら機械式も◎
都心エリアであれば機械式駐車場という選択もあります。
新宿・渋谷あたりで35,000円〜45,000円/月とまぁまぁな賃料ですが、周辺の青空駐車場相場と比較すると+5,000円程度に収まっていますし、駅近立地なら青空駐車の方が高いケースもあります。
出し入れに時間が掛かる(5分程度)
SUVなど車高の高い車に対応した機械式駐車場が少ない
という弱点はありますが、防犯性に優れ完全屋内保管できるメリットは大きいです。
僕も屋内駐車場(普通の平置き)を借りていますが、ボンネットや屋根で猫が寝てた…なんてこともありますから、笑
ちなみに、機械式駐車場にもいくつかの種類(世代)があります。
“メリーゴーランド式”“吊り下げ式”と呼ばれるタイプは地震の際に車が落下するという被害事例もありますので補足しておきます。機械式駐車場で複数の選択肢があるのなら、どんなタイプの機械なのかも確認しておきましょう。
夏本番に向けてできる対策を!
駐車環境における劣化防止対策をまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。
車に限らず工業製品は必ず経年劣化が発生するので、防ぐというよりは“できる限り遅らせる”というのが正しい表現になりますが、やるのとやらないとでは5年、10年で雲泥の差が生じます。
前述した5つの対策を見て「なんだ、当たり前のことじゃん」と感じた方もいるかもしれません。
ですが、劣化防止に関しては「これを塗ったら防げる」「最新の車種だか問題ない」みたいな都合の良い解は存在しません…
当たり前のことを当たり前に繰り替えしていくしかないのです。
今年もそろそろ夏本番。
紫外線量は7-8月がピークで、4-9月にかけて1年間の70-80%の紫外線が降り注ぐというデータもあります。
猛暑は人間だけでなく愛車にも多大な負荷を掛けるので、全てとは言いませんが出来る対策からはじめてみてはいかがでしょうか。