2020.7.3 2021.2.1

メンテナンスの基本「オイル交換」

クルマのエンジンルーム

クルマのメンテナンスと聞くと「難しい… 俺(私)にはムリだ…」と端から諦めてしまう人もいるでしょう。
しかしメンテナンスと言っても千差万別で、機械的な知識が無くともできることはありますし、その気遣い一つで愛車の調子や寿命を大きく左右したりします。
今回はその中でも簡単かつ重要な「オイル交換」についてお話しようと思います。

一口にオイルと言ってもパワーステアリング、ブレーキフルード、ATオイル、デファレンシャルギア…と様々な部分にオイルが使われていますが、ここでは「エンジンオイル」にフォーカスします。

オイル=クルマの血液

よくオイルはクルマの血液だ!なんて言われますが、まさに的を得た表現と思います。
エンジンオイルの役割は主に次の5つであり、円滑な駆動や熱放出に欠かせない存在なのです。
特に①②はオーバーヒート、焼付きの直接的原因になりかねないので軽視できませんね。

エンジンオイルの主な役割

①潤滑油となり、エンジン内部の摩擦を軽減
②粘度により、エンジン内部の気密性を保つ
③エンジンの熱放出(冷却)
④ススなど、エンジン内の汚れを洗浄
⑤エンジン内のサビ・腐食防止

交換を怠ると…

オイル交換を怠ったことでオーバーホールを余儀なくされたエンジン
エンジン内部を痛めてしまうと、ウン十万円規模の修理が必要になることも…

エンジン内部の洗浄を兼ねていること、常に高温(エンジン内部は約2,000℃まで上昇する)に晒されるため、エンジンオイルは当然に劣化していきます。
エンジンオイルは少しずつ、でも確実に劣化し性能が落ちていくのです。
毎日乗っているとその変化に気づきにくいかもしれません、また交換時期を過ぎて乗っていたとしても急に不調が出るわけでも無いのでいまいちオイル交換の必要性を感じていない方もいるかもしれません。

それは人間と一緒で、血中脂質が高く血液がドロドロだったり、血圧が高くても明日明後日に倒れたりはしませんし、1年・2年後も問題ないかもしれません。
でも、そのまま放置すればいつか必ず重大な疾患をもたらすでしょう。

エンジンオイルも同じです。
潤滑性能が劣化すればエンジン部品同士が擦れ摩耗し、そのカスや破片がエンジンオイルに溶け込み至る部分を痛めつけます。
気密性が失われればエンジンオイルが燃焼室内に入り込み、燃料と一緒に燃焼されオイル量が減り、潤滑や冷却に致命的な影響を与えます。
冷却性能が失われればエンジン温度は設計値を上回りガスケットやシール、ブッシュなどの寿命を大幅に縮めますし、熱はエンジン周辺の補機類(燃料噴射装置や点火系、駆動ベルト等)にまで悪影響を与えます。
このようにオイル劣化を放置するとエンジン全体を複合的に蝕むことになります。

「3年毎に乗り換えるし、そんな先のことどうでもいい」という方にはムリにオイル交換しろと奨めるつもりはありません。
愛車を大切にしていて5年、10年、さらに長い時間を共にしたい。
もし乗り換えることになったとしてもできるだけ良い状態で次オーナーへ引き継ぎ、長く現役で走ってほしい。と考えるのであれば、オイル交換の重要性を知っていただけたら幸いです。

どのくらいの頻度で交換すれば?

オイル交換をする整備士
オイルはクルマの血液!基本であり重要な整備です。

オイル交換でまず疑問になるのが、その交換頻度ですよね。
ディーラーでは「10,000km〜20,000km」と言われたかと思えば、カー用品店では「3,000km〜5,000km」「6ヶ月に1回」なんて書き方もしています。

どちらも間違ってはいませんが、条件は走り方(使用頻度)により変化します。
もちろん車種やエンジングレードにより、違いはあるものの一般的な乗用車であれば以下を参考にしていただけたらと思います。

3,000km〜5,000kmで交換をお奨めするケース

年間走行距離が5,000km以下で、子供の送り迎えなどチョイ乗りが多い
渋滞やアイドリングが多い
急加速など高回転域の使用が多い

年間走行距離が少ない場合は交換距離も短くなります。
特に近場(10km圏内目安)をちょこちょこ走っているような場合は、それこそ3,000km台で交換を推奨したいです。
1日10km×365日=3,650kmという計算になりますから、このような乗り方の方は3,000km〜5,000km交換が正解となります。

もちろん理由もあって、エンジンオイルは空気中の水分を吸うことで酸化して性能が下がります。
定期的に長距離走るクルマはしっかりとエンジンオイルに熱が入るため水分を蒸発させることができますが、ちょい乗りではエンジンオイルが十分に加熱せず水分を含んだままになってしまうのです。
放置するとエンジン内部のサビ原因にもなるので少なくとも1年に1度はオイル交換をしてあげましょう。

また、高回転使用は言うまでもないですが、渋滞やアイドリングも“シビアコンディション”と呼ばれ、エンジンオイルには不利な環境です。
ある程度の速度で走行していればエンジン本体、または冷却水を冷ますラジエターに外気があたりエンジン温度はそこまであがりません。

しかし、停車中は冷却効果が著しく低下してエンジン温度、オイル温度を上昇させてしまうのです。
渋滞であれば前車の排熱を吸い込む形になるのでなおさらです…
オイル設計時の想定温度を大幅に上回ることとなり、これも性能を低下させる一因となるのです。

ちなみに、エンジンオイルは走行しなくても劣化します。仮に年間走行距離が数kmだったとしても、1年に1度は交換しましょう。

10,000km程度で交換をお奨めするケース

月1,000km以上のペースで走る
使用頻度が高い(月4-5回以上)
高速道路など一定速度で走り続けることが多い

月1,000km程度の走行距離があり、頻繁に乗っている。なおかつ、高速走行でそれほどエンジン温度もあがらない走り方なら10,000kmスパンで交換しても問題ないでしょう。
エンジンにとっては80km-100km(2,000-3,000回転)程度で走り続けるのが最も負荷の少ない環境ですから。

最近はヨーロッパ車を中心に「20,000km交換」が謳われています。
ディーラーが推奨するくらいなので、20,000kmスパンで交換してもしばらく(10年とか)は致命的な故障につながることはないでしょう。
しかし、欧州メーカーは「アウトバーンのような道を1年間で20,000km走行する」という想定で設計していますから、日本(特に東京)での20,000kmとは大きく前提が異なります。

10年後もできるかぎり新車のフィーリングを残したい」「生涯このクルマに乗っていきたい!」というように考えているのであれば、20,000kmを待たずとも10,000kmもしくはそれ以下で交換するに越したことはないのです。

ここからは想像でしかないので何の根拠もありませんが、環境負荷の観点からもメーカー側は20,000kmという数字を提示せざるを得ないという大人の事情もあるのではないでしょうか。
ビジネスライクに考えれば「日本の交通状況は負荷が高いので、5,000kmスパンの交換を推奨します」と言えば単純に4倍儲かるわけですから、笑
ただでさえ化石燃料自動車に対する風当たりが強い世の中で、オイル廃棄による環境負荷にまで言及されたくないという防衛姿勢なのかもしれませんね…

銘柄が多くて…何を選べばいいの?

カー用品店に陳列されるエンジンオイル

AUTOBACSやイエローハットなどカー用品店に行くと、エンジンオイルコーナーがあり多くの銘柄が並べられています。
エンジンオイルは「10W-40」「5W-30」などの粘度表記が一つの目安となり、左側(10W)が低温時、右側(40)が高温時の対応気温を示しています。
オイルは温度が下がるほどネバネバに、上がるほどサラサラになる特性があるので、寒い環境で使う時はサラサラしたオイル暑い時はネバネバしたオイルを入れるというのが基本的な考え方です。

ただ、ここで言う“寒い”ってマイナス30℃とかだし、暑いも40℃〜50℃のレベルですから、極寒のロシアや灼熱の砂漠で使うのでなければ季節ごとにエンジンオイルを入れ替えるというほどシビアになる必要はありません。

さらには「鉱物油」「部分合成油」「化学合成油」とオイル成分による違いもありますが、これらの違いを解説しだすとても長ーくなってしまうのでここでは割愛します。
巷では高価な100%化学合成油が良い!という話も聞きますが、オイルに関しては高価で高性能になるほど良いという理屈は成り立ちません!
最も大切なことは「愛車に適したエンジンオイルを選ぶ」ことなのです。

そして適さないオイルを使ってしまうとこんなトラブルが発生することもあります…

化学合成油が良いと聞き入れてみたが、燃費が悪くなり加速感も鈍った。
20年前のクルマに高価な化学合成油を入れたらオイル漏れを起こした。
安価な鉱物油を使い続けたらエンジン内にススが溜まってしまい修理が必要になった。

近年もてはやされている化学合成油もシールやガスケットへの攻撃性が高かったり、粒子が細かいゆえにオイル漏れを引き起こしやすいなどデメリットもあります。
もちろん安価で粗悪なオイルを使い続けたことでスラッジと呼ばれるススが蓄積してエンジンをダメにしてしまうケースもあります。

では何を選べば間違いないのか?
答えは「メーカー指定エンジンオイル」です。
ディーラーでオイル交換してという意味ではなく、メーカーが指定または推奨している銘柄と粘度のオイルを使用すればカー用品店でも街の自動車整備工場でもOK。
基本的に指定オイルも汎用品なのでディーラーでなくとも広く取り扱っています。
(新車保証の条件がディーラーでのオイル交換実施となっている場合もあるので、保証加入している方は要確認を!)

「サーキットで走り込む」「大幅にチューニングしている」「極端に真夏の渋滞走行が多い」といった特殊な使用方法でなければ、メーカー指定オイルがベストです!
冒頭で説明したようにエンジンオイルには潤滑、気密性確保、冷却、洗浄、保護と様々な役割があります、自動車メーカーはエンジン設計段階から最適なオイルを研究しており、何十万キロ/何万時間というテストを経て工業製品として送り出しています。
特に最近のクルマは燃費性能を引き出すため、過給器(ターボ)を備えたり高めの圧縮比を設定していたりとエンジンオイルの性能ありきで設計されたエンジンも少なくありません。

仮に高価なオイルを入れたからといって、何キロも燃費が伸びたり何十馬力もパワーアップすることはありません。
どんな環境でも平均的なパフォーマンスを発揮し、長期にわたり調子を維持できるメーカー指定オイルを選ぶことをお奨めします。

カー用品店でも「メーカー指定のオイルでお願いします」と言えば、適合表から最適なものをチョイスしてくれます。
僕もメーカー指定オイルを使用していますし、かなりの専門知識がある方でなければこれが無難かつベストな方法と考えています。

オイル交換のコスト

オイル交換の重要性と頻度についてはご理解いただけたかと思いますが、そうは言ってもお金掛かるな…という気持ちもわかります。
ただ、オイル交換をケチってスパンを長くしたところで長期的に見ればそこまで大きな金額差にはなりません。

カー用品店の標準的なグレードのエンジンオイルで800円/L前後です。
2,000ccクラス(オイル量4L)で10万km走ったと仮定してシミュレーションしてみましょう。

10,000kmスパンで交換した場合
オイル交換回数 10回
オイル費用 3,200円(800円×4L)×10回=32,000円
工賃 1,000円×10回=10,000円

合計コスト:42,000円


6,000kmスパンで交換した場合
オイル交換回数 17回
オイル費用 3,200円(800円×4L)×17回=54,400円
工賃 1,000円×17回=17,000円

合計コスト:71,400円(▲29,400円)

いかがでしょうか。
確かに3万円弱の差が出るのは事実ですが、約10年間で3万円です。
もちろん3万円は安くない金額ですが、1ヶ月で換算すれば250円程度。
クルマの維持費としてはそこまでインパクトのあるものではないでしょう。
こまめなオイル交換で不調や故障を回避できる可能性を考えれば、極端にケチる部分ではないというのが僕の考えです。
また、高価なオイルを入れて10,000km引っ張るならメーカー指定オイルで5,000kmスパンで交換していたほうが圧倒的にクルマに優しいと言えますよ。

結論

オイル交換頻度は乗り方により、3,000km〜10,000km程度
欧州車で推奨されている20,000km交換はあまり推奨できない
メーカー指定オイルがベスト
オイル交換頻度をケチっても維持費全体からしたら極わずかな差である
高価なオイルで引っ張るならメーカー指定オイルで頻繁な交換を

僕なりに調べたり経験したことをベースにしていますが、皆様のお奨め銘柄などがありましたらコメント欄よりアドバイスいただけたら嬉しいです!

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